もう、いいや。

夜、窓を開けてタバコを吸っていると、吹き込んでくる風が肌寒くて、もう夏は終わったのかと思う。午前三時。

夏休みっていうのは期待してたぶんだけ後悔することが多い。小学生のときからずっとそうだった。溜まった宿題を前にしてお先真っ暗になるのもいつものことだ。
「悔いのない人生を」ってよく言うけど、「悔い」を感じるくらい期待を抱けた人生っていうのもいいじゃないか。
夢とか希望なんてものは、山盛りに盛ったカキ氷みたいなもんで、一人で食べつくすことなんてできないもんだ。頭痛や歯痛に顔をしかめながら、それでも根性で食べ続けた人にだけやっとわかるもんなんだ。凡人は夢を追う人を恨めしがっていればいい。すねて妬んで腐りきって、僕は立派な凡人になりたい。
後悔、無気力、後の祭り。何でもありだ。叶えられなかった可能性の束を背負い込んで、どこまでも続いていけばいいじゃないか。
問題は、後悔することに耐えられる自分を作れるかどうかだと思う。後悔することになったのは誰のせいなんだ?悲鳴をあげて突き進むより、ぬるま湯の中で後悔することを選んだ自分はなかったのか?
そんな自分をまるごと受け入れて、僕はダメ人間だとヘラヘラ笑って、死ぬまでふんぞり返ってやる。

吸い終えたタバコをジョージアの空き缶でもみ消して、窓を閉める。沈黙。暗闇。ずっと一人。