もう年明けかよ

自分の人生はたそがれていて、あとは長い余生を送るだけだという気がしてならないのはなぜだろう。
山崎マキコ先生の『マリモ』の中の一節だ。この一文は偉大だよ、ほんとに。
電車でちょっとうたた寝してる間に目的の駅を通り過ぎてしまい、まじやっべー!と思いつつ、寝ぼけ眼で窓の外の景色を見やってる。僕の人生はちょうどそんな状態。次々と視界の外へと飛び去っていくあの景色はもう二度と見ることはできないし、一つの景色をじっくり眺めてる暇なんて無い。前の駅まで引き戻さないといけないとは分かっているけど、そんな気力がない。もう、人生を回復させようって意識なんか消えちゃったよ・・・
脳内に住むゼリー男が聞いてくるんだ。「いいの?こんなんで」って。
「別に」って答えたら、ゼリー男は「適当だなー」とか、「お前はダメなやつだよな」とか言って、半笑いしやがる。くっそー。本当はもっと輝いているデキる男になりたいけど、それをあからさまに宣言しちゃうのはさすがに恥ずかしくて、逃げるように「もうダメだ」なんて呟くことがそんなに悪いのか。

実家に帰って、高校の友達と会った。
高校のころ友達は三人いた。木村と山下と村田。三人とも僕と同じ寮に入っていて、彼らは高校時代の僕の憎悪の対象であり、恐怖の大魔王からの使者だった。僕はそのころ救世主の到来を心から待ちわびていたのだが、なかなか来てはくれなかったので、僕の頭は円形脱毛症で禿げ上がったものだった。閉じ込められた寮生活の中で逃げ場は無かった。

僕は高校のころは今以上にウンコな奴で、人をいらいらさせる奴だったから、もちろんのこといじめられた。
いや、いじめられたって言うより、過度の「いじり」を受けたって感じ。僕にとって木村と山下と村田との思い出は他人から見たら仲良さげに見える、そしていじる側もいじられる側も、なんだか一体感みたいな気持ちいい感情を弱冠持ってしまうような、そんな微妙な人間関係の中に包まれているんだ。

真冬にベッドに寝ていたら毛布の中にドライアイスを入れられた。夜中たたき起こされてパシリに行かされた。「グラップラー刃牙」の五点着地を再現しろと言われて、2階から飛ばされた。半年前の黒ずんだ冷凍バナナを食べさせられた。AVをパシらされた。「いびきがうるさい」と言われて、部屋を追い出され、廊下に布団を敷いて寝たりした。
山下はにぎりっ屁をこく度に僕に無理矢理嗅がせたし、木村は変なあだ名をつけるし、村田は意味も無く部屋までやってきてベッドを占領して、僕は床で寝る羽目になったりした。
高校のころには助けてくれるような友達が一人としてできず、よく孤独を感じたけれど、あれから二年たった今でもいまだに一緒に会って遊んでいるのは殺したいほど憎んでいたその三人だ。

久しぶりに会ってみると、以前気付かなかった友達の良さに気付いちゃったりして、昔、ただ被害者ぶっていた自分のことが「ああ、あのころ僕はアホだったんだなぁ」と思う。