健全な身体には健全な精神が宿る

昨日はサークルのクリスマス飲み会があった。こういう楽しいイベントに出席すると、普段人付き合いの少ない僕はうまく人と話せているだろうかと、つい不安になる。何かとぼーっとする癖のある僕は、ともすると相手を退屈させたりイラつかせたりしちゃうので、表面上はニヘニヘとだらしなくニヤつきながらも内では何か話しのネタになるものはないのかと慌てふためき、「きょーっ!」と絶叫したくてたまらない心持なんだ。
黙々と酒を口に運び、横を見れば隣のテーブルはおおいに盛り上がっている様子。ほら、こっちの席の皆は退屈しちゃって、うらやましそうに横のテーブルを眺めている。ここは何か会話を振らなくては。盛り上げなくては。でも、何をネタに会話を振ればいいのだ?思い浮かばない。どうして僕はここでパッと面白いギャグをひねり出せるような人間じゃないんだろう。って、悩んでたってしょうがない。だいたい部屋に閉じこもって外に出ないからいけないんだよ、って頭の中で誰かが説教をたれる。
気まずい沈黙って苦手だ。言葉ってのは内に溜め込むのと外に吐き出すのとでバランスを取らないと、精神上不衛生だ。溜め込んでばかりだからこういうお酒の席で後悔することになる。
とりあえず隣の席に座っている女の子に話しかける。「クリスマスどうなん?彼氏できた?」「いや、できない。一人だよ」「あー、そっかー。気持ちわかるよ。俺、彼女いない暦二十年だもん」「え、まじでー?終わってるー」「うん、まーね。だから今年は自棄起こして友達のウンコ食うけどね!人生なんて糞だよ」
って、あれ?女の子、引いている。やっぱり女性にウンコの話は不味かったか?仲間内ではかなりこの話は受けたのに・・・っていうか、こんな話でウケてしまう僕の友達が単純に終わっているのか?っていうか、一番終わっているのは僕自身なのか?
どっと冷や汗。脳内のパニックは歪んだ半笑いの形で顔面にこびれついた。はじけ飛びそうになる精神はアルコールで落ち着けよう。ぐびぐび。すると日本酒が実は美味しかったという事実に気がついて、僕は感動する。ぐびぐび・・・
そんで調子に乗ったのがいけなくて、突き上げるような吐き気に襲われた僕はトイレに駆け込んだ。とりあえず顔を洗ってさっぱりしよう。もうお酒の席で、便器にすがりついて嘔吐するなんて真似はしたくない。トイレの中、吐き気をこらえつつ蛇口をひねろうとすると、洗面台の中には先客の吐いたゲロがなみなみと佇んでいて、それを見てしまった僕は当然気持ち悪くなってTOTOの陶器の中にゲロを追加する羽目になる。
ピチャピチャと揺れながら蛍光灯の明かりを跳ね返すゲロの表面に、鼻水と涙を垂らした自分の顔がうっすらと映って、僕は人生をどうしようかと、二分ほど立ち尽くす。