身を削りながら、イデーっと絶叫しつつ毎日を疾走しているようだ

高校時代の友人Sくんは受験シーズンの2月に「オクナって、大学に入ったら絶対オタクになってそうだよな」と僕の未来を予言してくれたのだが、その何気ないひと言は今思い出すと実に恐ろしい。
今日は夜9時くらいに奥山くんのアパートに遊びに行き、二人で酒を飲みながら、ガイナックスGONZOのアニメを見た。「ここって、エヴァのあのシーンをモチーフにしてるよね!」と、つっこみを入れている自分に絶望を覚える。
一年前はこんなことありえなかったのに・・・
奥山くん曰く「この会話をさ、女の子が聞いてたら、まず間違いなくひいてるよ。カメラで今の僕らを撮って第三者の視点で眺めたら、オタクと判断するほかはないよ」
悲しいけどその通りだ。僕たちは知らないうちにアニメのキャラの声がどの声優さんなのか、わかるようになってしまっていた。人生のレールを僕たちはいったいどこで脱線してしまったのだろう?
煙草が切れたのでコンビニにキャスターを買いに行こうと、夜の三山木を二人並んで歩く。途中、話題がウルトラマンの話になり、奥山くんがウルトラ六兄弟の名前を全部言えないことに逆切れしてしまう。
「だから、レオとアストラは六兄弟のうちに入らないんだってば!そもそもレオやアストラなんかはセブンやマンに代表されるウルトラマンとは別の種族でね・・・」
思わず熱くなる。ふと横をみると、奥山くんは吐寫物をながめるような眼で僕を見ていた。
そんな眼で見ないで!
アパートに戻って煙草をふかすと、一瞬気持ちが暗くなった。
普通の人になるのが怖いから、だからといってどこに行けばいいのかわからないから、他人を遮断しようとして地面に深く深く穴を掘って、閉じこもっていたんだ。
「声が聞こえるんだよ。もっと掘れ、もっと掘れ、ってね。あとちょっと掘り進めば何か大切なものが見つけられるような気がするから」
そう言って奥山くんは笑った。
「んで、気が付いたらもう光が届かないところまできちゃってたよね!」
僕も笑いながら言い返す。
もう笑うしかなくて二人で爆笑したけど、何年後かに奥山くんの言葉を思い出す日が来るのかな、と、なんだか寂しく思ったりなんかして。