走る走る。

くっそー。僕は今までの期間何をしていたのだ!
PS2、オナニー、飯、睡眠。ああ!なんて単純なサイクル!うんざりする。
人間は一日中、ベッドとトイレとの間を往復するだけでも気は狂わないのである。
ああ、でもこの数日の間で本当に堕落しちゃったなあ・・・
見よ、この体重計を。日ごろの運動不足が祟ってか、四キロもデブってしまったではないか!!
うっわあ。死にてぇー。
もはや元凶となったPS2は叩き潰すべきだろうか。しかしそれではSONYの方々に申し訳がない。
ここは一つ、ちょうど天気も良い事だしランニングなどをすべきだろう。運動不足が解消されスリムアップされるだけではなく、脳内物質の分泌がもとで高尚な精神が得られるというおまけも付いている。
よっしゃー!レッツ渡来!真昼の三山木を走りぬくぜー!
僕は勢いよくドアを開け、外の世界に飛び出した。
しかし待っていたのは灼熱の地獄。ユリ・ゲラーなどいなくてもスプーンが曲がって見えるほどの猛暑。
だ、だけど、負けちゃいけないんだ!僕は走り出した。
近鉄の駅を越え、国道を曲がり、コンビニの前を走りぬけ・・・おや、前方から炎天下の中、なおも気温を上昇させる熱源体が接近中だ! カップルだ。
ふふ。でも僕からすれば君たちなんて過小な存在。まさに蟻かプランクトンさ!こうやってクソ暑い中スピリチュアルな経験を求めてロードワークしている僕のほうが二千倍尊いぜ!
・・・ってあれ?あのカップルの彼氏のほうは確か以前同じサークルだったI君・・・
げっ、しかも彼女のほうは後輩のAさんではないっすか!まじで?つきあってたの?いつの間に?
疑問が端々から浮かぶなか、僕とすれ違ってもまったく気づくことのなかった二人の恋人達は、遠くのほうで霞んで僕の視界から消えた。
くそっくそっ。めげないぞ僕は。めげないぞぉおおお!
延々と走り続けた。しかし、煙草の影響だろうか、ひどく息切れがして眩暈がするだけで、高尚な精神など得られるはずがなかった。うんざり。
僕はとぼとぼと家路を歩いた。帰りにローソンでアンパンを買った。
途中、野良猫が物欲しげに僕を見つめてミーミー鳴いたが、僕は何もあげなかった。アンパンのひとかけらすらも。
どうせ、僕は誰にも影響を与えることは出来ない。っていうか他人に干渉したくない。
一人ぼっちがいい。一人でさなぎの中に閉じこもって、マンがなり小説なりを読んでいたほうが百倍ましだ。
かってな理屈をこねて、猫をうっちゃって帰ってしまった。