世界の果ての三山木で

久しぶりに死のうと思いました。このまま三山木の土になろうと思いました。こう思うことには理由があるんです。まず、最近テスト期間で引きこもり始めたことが、これに大きく絡んでいると僕はにらんでいます。
これまでサークル活動や、まともなお友達との間でこつこつと身につけてきた対人能力が、いったん引きこもってしまったがために、まったくのゼロに戻ってしまったのでした。あと少しで人間になれると思っていたのに、もう一度妖怪レベルからやり直しですよ。くそぅ・・・。こんなことならまともに学校に勉強しに行ってればよかった。
最近、友達から見放される夢ばかりみるんですよ。どうしてでしょう?
そういえば、今日、久しぶりにサークルに顔を出しました。しかし僕は周りに人間がいるってことに対する耐性を失っているため、五分も経たぬ間に息苦しくなってきました。
それで、「俺、ちょっと眼が炎症起こしてるみたいだから、病院行くわ」と、嘘ついて帰ろうと思ったのですよ。でも、意に反して出て来た言葉は「びょ、びょ、びょーいんちょっと目がアレだから、俺、ちょっと帰らないけないから、帰るね」でした。見事にどもってしまいました。対人スキルはいつのまにやらどん底にまで落ちていて、いよいよ僕は病院に行かないといけないかもしれません。
欝だ。
胸が重たいです。鉛の塊が僕の胸の中には埋まっているような気がするんです。
このままでは社会に羽ばたいて行くことなど、夢のまた夢です。
家に帰る途中、コンビニに寄りました。煙草を買おうと思ったのです。陰鬱な気持ちでレジの女の子にキャスターのクールバニラを頼みました。
そしたらその女の子が僕に向かって「煙草吸われるんですか?あの、あまり似合ってないから、控えたほうがいいですよ。いや、悪い意味じゃなくて・・・」などと、笑顔でぬかしやがるわけですよ。
異性に声を掛けられたことなど数週間ぶりですよ。僕は不覚にも胸がときめいてしまったわけですよ。ああ、童貞の悲しみ・・・でも、なんか気の利いた言葉を返そうと、少しでも異性とコミュニケーションを取ろうと思い、僕は頑張って口を開きました。そしたら出て来た言葉が「すみません」ですよ。僕は謝ることでしか他人とコミュニケーションが取れないのだろうか。久しぶりに死のうと思いました。
欝だ、欝だと愚痴りながら、女の子に話しかけてもらっただけで嬉しさ満点のこの僕って何なのでしょう。
童貞?
僕には文学的な悩みとか、高尚な悩みとかそういうものは無いのか! 
無いんです。
それから家に帰るまでの間、僕は自分の童貞的性質が物悲しくて、「ドーテードーテードーテー」と、童貞の呪文を何度もリフレインしつつ帰りました。すると、不思議なことにこの「ドーテー」という低く地を這うような呟きが、まるで自分にずっと付きまとう効果音のように思えてくるんですよ。あはは。俯きながら歩いていたため、自動車に轢かれそうになりました。ドーテー。あっ、そう言えば「自動車」って、韓国語で「チャードンチャー」って言うみたいですよ。発音、ちょっと似てますよね。うふっ。