自分は女に飢えている。

ああ、もうなんだかやりきれない。学期末試験への恐怖や焦燥感に打ちのめされた僕は傷ついた自己を慰めるべく、先日、近鉄の電車に乗って実家へと舞い戻った。
家に着いたのは夜中の八時ごろ。玄関のドアを開けると、居間の方から明るい笑い声が漏れてきた。
お客さんが来ているらしい。ふすまを開くと、丸いちゃぶ台を囲むようにして両親と弟と、それから、叔母さんと従姉妹のユミちゃんが畳の上に座っていた。
僕の姿を目にした途端、叔母さんは「あらあ、久しぶりね」って言うと、「なかなか大人っぽい顔つきになったじゃない」と隣にいた僕の母に囁き、太った体を揺さぶるようにして豪快に笑った。あはは。からかっているんですか?
僕は一瞬イラっときたが、一応照れくさそうに見えるようにしないといけないかなと思い、ニヤニヤと笑いながら叔母さんの隣に胡坐をかいた。
帰ってこなければ良かったなあ・・・弱冠、後悔する。
隣に目をやると、僕と視線がかち合ったユミちゃんは、ちょこんとお辞儀をした。
ユミちゃん、しばらく見ない間に随分女の子っぽくなったなぁ。素直に驚く。
少しぽっちゃりしてるけど、しっかりと「女の子」になっちゃっている。近くで見るとうっすら化粧しているのが分かる。くそう。小学校までは鈍な女だったのに・・・ユミちゃんとは小学校までは一緒の学校に通っていたのだったのだが、僕が中学受験したために、卒業式の後にはまったく疎遠になってしまっていた。歳月は人を変える。あれから7年経って、いじめられっ子で泣きながら鼻水垂らしていた鈍重な女の子をここまで進化させた。
ユミちゃん、頑張ったなぁ・・・。それに比べて僕は、ああ、いつまでたっても屑のまま・・・。

しかも、この屑の僕は7年ぶりに逢うユミちゃんに対して、今なんと、微妙に恋心を動かしつつあるのだ!
ああ最低!うんこ!・・・でも、もしかしたら、いけるんちゃうか?
ちょっとなんかさりげなく、「最近どうなん?」とか聞いてみようか?

しかし家の馬鹿次男(ター君 5歳)は、こういうのほほんとした空気に痺れを切らして、「レゴブロックしよーよ!」とごねて、ユミちゃんを部屋の隅に置いたポリバケツの方へと連れて行ったのだった。
くそっ、このガキっ!

でもこう、ちょっと距離おいて、ユミちゃんが幼児と戯れてるのを眺めるのも心癒されるなぁ・・・
ううぅん、いい感じ。そういやユミちゃん胸でっかいなぁ。巨乳だなぁ。いいなぁ巨乳。
なんて心和やかになっていたのだったが、僕は見てしまったのだ!何を?
ター君がユミちゃんの乳を揉んでいるのである。
しかもそのやり口が実に巧妙で、「だっこしてぇ!」とごねて、自分の正面にユミちゃんの胸が来るようにだっこさせたあげく、自分を抱き上げたために両手がふさがって防ぎようの無くなったユミちゃんの胸を、情け容赦なく揉みしだいているのである。
ター君はなんたる色情魔であろうか。わが弟ながら末恐ろしいものを感じる。

それから数時間たち、ユミちゃんと叔母さんは仲良く帰っていった。僕は、ター君の悪行を見てムカついていたので、脚を思いっきりつねってやった。したら火の付いたように泣き出したので、逃げるように家を飛び出して近鉄に乗り、マンションの自室に帰ってきて、煙草をふかしたのである。
そしてユミちゃんのメルアドを聞けばよかった!と、今更ながらに後悔して、酒を飲んで寝るのである。うふふん。