コーラの炭酸抜けるとき無くすもの・・・

今日もまた雨が降った。けどそれもどうでもいいこと。
マンションの隣人の安田という男とまた酒を飲んだ。日本酒を、紅茶で割ると、おいしい。
「そういえば、俺、いい話を聞いたよ」
ラークマイルドを片手に安田が言う。
ペプシネックスメントスっていうガム入れると、爆発するんだぜ」
どこがいい話しなんだよ・・・
とりあえず試すことにした。
ちょうど雨が上がったところなので、近くのファミリーマートにコーラとメントスを買いにいった。
二人で「世の中なんてクソだよ!!」と絶叫してたら、通りすがりの頭悪そうな女の子達に「アホおる」って笑われた。
くそう・・・。
実験はマンションの大家さん宅の前で行うことにした。
以前僕らは、夜中に騒いでいて、この大家さんに大目玉を食らったのだった。積年の恨みだ・・・。
炭酸が抜けないように、ペットボトルをそーっと地面に設置する。
次に、メントスをコーラの中に投入する。
これはコーラびたしになる危険があるので、じゃんけんで決めることにした。じゃんけんに負けた安田が恐る恐るメントスをコーラの中に落としていく。
一個、二個、三個・・・
ペットボトルが震えだした。いよいよだ!
とんでもないことがおきるだろう。爆発音が近所のすみずみまでに響き渡ることだろう。あたり一面にコーラが飛び散るだろう。それで僕らは恐らくまた大家さんに怒鳴られることになるだろう。
もしかしたら僕等はマンションを追い出されるかもしれない。けど、まあいいや。
退屈な日常に未練はない。欲しいのはとびきりでかくて、しょうもないネタ。
しかし、ぷるぷる振動するペットボトルは、三十センチほどコーラを噴射した後、ころんと転倒して、だらだらとよだれを流すばかりであった。

コーラの炭酸抜けるとき無くすもの・・・。

ゆらゆら帝国の「午前3時のファズギター」が脳内に響く。

ぎりぎりの中で生み出される何か。コーラの炭酸が抜けてしまったら、あとには気だるい甘さだけが残る。
恐らく僕が今生きているのは、惰性の人生だ。急勾配の坂を滑り落ちた後に続くあの惰性の力で、僕という車は走っている。
「このままずーっと続くような気がするよ」と、ぼやいたら
「まぁそれでもいいじゃない」と言って、安田はワンカップ大関を煽った。